「精神障がい者の就労支援をとおして人生が豊かにされる喜び」

                 高次脳機能障害者家族会月例会

                 2012年11月10日
                 みやぎNPOプラザ
                 NPO法人シャロームの会
                 理事長 行政書士 菊地 茂

 

1.精神障がい者(チャレンジド)との出会い
(1)略歴
・宮城県松島町出身【1956(S31)年9月11日生】
・東北工業大学高等学校、東北学院大学法学部卒業【1979(S54)年】
・地方公務員、民間企業勤務を経て、シャローム行政書士事務所を設立【1992(H4)年】
・NPO法人シャロームの会設立【2003(H15)年】
・小規模作業所「アトリエ・ぶどうの木」開設【2004(H16)年】
・障害者福祉サービス事業所認定【2007(H19)年】
(2)精神障がい者(チャレンジド)との出会い
①精神障がい者の方の財産管理の相談を受託【1999(H11)年】
②職親事業としてチャレンジドを支援【2000(H12)年】
  ※「職親制度」…社会適応訓練事業(普通の会社に就職する自信のない人が協力作業所に通いながら就労を続けていくために必要な訓練を受ける事業)
  ※「チャレンジド」…諸外国ではハンディを抱えた人たちをチャレンジド(神様から挑戦すべきことを与えられた人)と呼ぶ。

2.NPO法人シャロームの会の働き
(1)シャロームの会の立ち上げ
①行政書士として、世のために働きたいという思い。さらには、他者のために働くことを通して自分が成長させられ、人生が豊かにされる喜びを多くの方々と分かち合うために。

 

(2)シャロームの会のモデル
①「べてるの家」の訪問【2000(H12)年】
◆「べてるの家」~北海道浦河町での当事者による地域福祉活動
・安心してさぼれる社会づくり
◆病気を生きる
・昇る生き方から降りる生き方へ ・病気に助けられる ・当事者研究
②「ヘール」の訪問【2004(H16)年】
◆ヘールの町は「フランダースの犬」の舞台となったアントワープという町から一時間程度の所にある農業中心の人口3万人程度ののどかな町。
◆町の中心には国立の精神病院があり、病院にはほとんど患者がおらず約700名の身体や精神のハンディを持った方々が町の一般家庭の中で暮らしている(里親制度がすでに1000年近く続いている)。
③イタリア・トリエステとの出会い【2011(H21)年】
◆収容所としての精神病院を解体した街
・トリエステ(1980年4月1日)
◆イタリア精神保健改革の立役者―フランコ・バザーリア(精神科医)
・イタリア精神衛生法改正(1968年)「自由こそ治療だ!」
・「1978年5月13日 180号法 可決」
  「精神科医を治安の責任から解放」
  「患者とはキミ、ボクの関係」
◆映画「人生、ここにあり“SI(シ) PUO(プオ) FARE(ファーレ)”(やればできるさ)」
◆映画「昔あるところにMattoの町(精神病院)がありました」
(3)シャロームの会の理念
◆この会は、豊かな人間関係を構築する為に互いの個性を受け入れあいハンディのある方たちの社会的自立を目指し、へだたりなく喜びを分かち合う事を目的とする。
◆病気であろうとなかろうと一人ひとりが素晴らしい存在である。
◆「人はみなそのままの存在が素晴らしい。なぜならその者として生かされているから。」
〈参照〉シャロームの会リーフレット、新聞記事、DVD

 

3.シャロームの会の精神障がい者への関わり方
(1)心の病気は関係病
◆しばらく前までは100%遺伝的な要素が原因となって起こるといわれてきた心の病も現在は特に0歳から3歳までの母親との基本的信頼関係に原因があるとも言われている。つまり、母親と子どもとの関係が多すぎたり少なすぎたり、時には全くなかったり歪んでいたりという経過があったとき、後にあるきっかけ(誘発因)を通じて各々の病状が現れてくると考えられる。
◆心の病気は母親との関係病。心の病気にはいろいろな要因があり、遺伝的要素もあるが心の病の原
因の一部が母親との基本的信頼関係に源を発していると考えられている。だからもう一度正しい関係を築くことによって心の病に大きな変化をもたらすことが期待できる。

(2)シャロームとは…
①「大丈夫」(ヘブライ語、日本語で「大丈夫」)
②一元に生きる
◇四つの生き方
⊖⇒⊖ 「お前は本当にだめな子だ。だからまたやったのだ。本当にしょうがない。」
⊕⇒⊖ 「今は景気がいいけどやがてだめになる。しっかりしないといけない。人生いいときばかりでない。必ずだめなときがやってくる」
⊖⇒⊕ 「今はだめでも必ずよくなる」ナンバーワン人生
⊕⇒⊕ 「あなたは本当に素晴らしい子だ。だからもっと素晴らしくなる。」
=オンリーワン人生=「一元(大丈夫)人生」


◆二元論(プラスとマイナス「良い・悪い」2つのものを並列する考え)
※モルデカイ・モーセ『日本人に謝りたい―あるユダヤ人の懺悔』(日新報道)
→戦後ルーズベルトの側近であったユダヤ系アメリカ人が日本の占領政策に関わり、産業界で取り入れていた「プラスとマイナス」という二元論を日本人の人間教育に取り入れた。
◆「拝」に生きる
かつて日本でも、一元の世界に生きた時代が平安時代にあった。400年弱続いたこの時代には、死刑の執行すら稀であったと言われている。この平安時代に「拝」という言葉が生まれた。「拝」という字は「手偏」に「手」と書くが、右手と左手という異なった二つのものがひとつに合わされた字である。日本語の返事の「はい」は「イエス」と「ノー」も兼ねる。「はい」の中に「イエス」も「ノー」も入れる日本語と「イエス」と「ノー」は全く別の英語との違いがここにあると言える。
③そのままのあなたが素晴らしい
      「being」=存在、いのち、目的 → 一元人生
 ◆
      「doing」=行為「できる・できない」「強い・弱い」「多い・少ない」、目標 →二元人生

◆「受容」
行為とは相対的で下を見ればキリがなく、上を見ればまた無限の世界。人がどのようなことをしたということではなく、その人の存在そのものを受け止めることを受容という。例えば…「私は物を盗みました」と誰かが言ったとき、その人のあるがままを受け入れるという事は、その行為を肯定したり否定したりすることではなく、その人がそうせざるを得なかった気持ちを受け入れる事。「誰でも盗むものですよ」とか「盗むのは悪いことですがあなたの場合は
特別ですという」言い方ではなく、盗んでしまった事に対して、「盗んだのですね」と肯定でも否定でもなく、そのまま包むこと。

◆自己受容は他者受容に比例する
  どうすれば相手をあるがままスッポリ受け止めることができるのか。それはまず自分自身を豊かに受け入れていく事。時代の価値観などによって自分を裁き、自分は無力でダメな人間だと信じて疑わない人が多くいる。そのような人からは人を受け入れる「説明」は生まれても、相手の懐に飛び込んだり相手を心から受け入れるようなエネルギーや温もりは生まれてこない。

(3)自立して生きる
◆自信をもって生きること
①人と比べないで生きる、目の前の結果と自分の価値は関係ない。
②等身大の自分自身を見出し受け入れ続けること。
  自分の実力を知り自分を決して責めないこと。
③自分自身を励まし続けること。


4.自己受容と他者受容を考えるために
(1)セルフ・イメージ
①セルフ・イメージとは「自分で自分のことをどう思っているか」
  ・性格・能力・容姿
②セルフ・イメージがあなたの行動を決めている…交流分析
・人はそのセルフ・イメージを自分の人生脚本として与えられた役を全力で演じようとする。
③人は正しい(健全な)セルフ・イメージを持っていない…エゴグラム
④セルフ・イメージはどこから来るのか…禁止令、育児スタイル
◆養育者(親)との関係
・親の気質、特徴
・親が自分をどのように受け止めていたか
・自分はどのような影響を受けたか
⑤カウンセリングとセルフ・イメージの関係…自己表現、being、doing
◆受容しようとすると、相手を受容できない自分に出会う
◆他者受容は自己受容に比例し、自己受容は受者受容に比例する
⑥セルフ・イメージの目指すもの
◆本当の自分を知り、その自分を自分として受け入れ、自分をこよなく愛して生きる
(2)ストローク
①ストロークとは
・人間が健全に生きていくためには、肉体の為の栄養物が必要なように「心の栄養物」がプラスのもの、すなわち人からの温かい理解に満ちた親密な働きかけであるプラスのストロークが必要。これなしには、人間は人間らしく生きられない。
②ストロークの種類
・プラスのストローク
・マイナスのストローク
③ストロークの法則
・人はプラスのストロークを求める。それがないと、マイナスのストロークを集めようとする。
・条件付きのストロークを与え続けると人は不安定になる。
・無条件のプラスのストロークは、人を安定させる。
〈参考〉ストローク・パターンチェックリスト

5.最後に
                「贈り物」
「Present」
               「今この時」「現在」

 

●幸せへの大切な鍵は過去を振り返ることでも、まだ来ない未来に不安を抱くことでもなく「与えられた今、この時が最高」としっかり心に語り聞かせる事。

●【豊かな人生を生きる~オンリーワン人生を生きる】
・豊かな人生を生きる秘訣は人を変えるのではなく「自分の心の持ち方を変える」こと。そうすると周りの世界も変わる。どうしたら自分の心の持ち方を変えることができるのか、それに
はどんな状況にあっても、どんな人に出会っても前向きに捉える心を養うこと、そのためには揺るぎない人生観を持つこと。何を見ても何を聞いても「素晴らしい」と考える心構え。
・人を変えることにエネルギーを費やすのではなく、自分を変えることにエネルギーを使う。
他人と過去は変えられない。変えられるのは自分と未来。それは自分の心次第。
・変えられないものを変えようとするのではなく、「変えられないものを受け入れる」事に徹する。

 

「変えられないものを受け入れる心の平安を、変えられるものを変える勇気を、そしてその違いを見極める知恵を。」(ラインホールド・ニーバー)

 


“今日は残りの人生の最初の日”

ある覚醒体験!

白取春彦さんのケアノート「突然苦しさ消えた ー 父の介護やるしかない」(読売新聞)(リンクはここ)「事実を認める、ありのまま受け入れる」、というある日突然の覚醒体験が記されています。

家族会員による文集「希望」はこちらから

岩手県安代の「希望の丘」への研修旅行はここ