「心の障がい者の就労支援をとおして人生が豊かにされる喜び」を聴いて
NPO法人「シャロームの会」のシャロームとは,もともとヘブライ語で「あるがまま」「そのままでだいじょうぶ」ということ.この会の設立には,「ぺテルの家」(北海道浦河,当事者による地域福祉活動,安心してさぼれる社会づくり,昇る生き方から降りる生き方へ),「ヘールの里親制度」(ベルギー,約700名の障害者が町の一般家庭(里親)で生活),「トリエステモデル」(イタリア,精神病院を解体,自由こそ治療だ!)等の実践活動がモデルになっている.菊池さんは,これらの場所をすべて訪問されている.
心の病はいろいろな要因で発症するが,その主要な根源の一つに幼児期における母親との関係性の問題があげられている.3歳ごろまでに充分母親へ甘える,母親から愛情をたっぷりうけることが大切で,これが足りない場合何かをきっかけに症状がでることがある.その症状とは,親からの期待に添おうとする建前の自分と無意識下の本音の自分,という二人の自分とどのように折り合いをつけていけばよいか分からなくなってしまう状態であり,こころの叫びでもある.前者の自分が何かをする「doing」だとすると,後者の自分は存在そのもの「being」である.症状がでた場合それを否定したり,直そうとするのではなく,むしろいいチャンスだととらえて当事者にそっと寄り添い,「シャローム」といってあげることであると.オンリーワン人生=一元(大丈夫)人生.
今回の菊池さんの「シャローム」という言葉は,すべての障害者(チャレンジド)へのかかわりにおいてきわめて大切です。わたしたちの高次脳機能障害の場合,とりわけ親から自立する前にあるいは自我を構築する前にこの障害を患ったケースでは,親との関係性を再構築することが何より、親も本人も変容しはじめ,やがてすべてを受容できることにつながっていき,人生が豊かにされる喜びがでてくるのではないかと.
菊池さん,ありがとうございました.豊田